タガタメ代表・酒井さんに聞く、売上と利益に本気で向き合うWebコンサルティングの話

タガタメの酒井さんとは、酒井さんが創業した12年前からの付き合いです。

お互いWebマーケティングの世界で仕事をしていて、パートナーとして長くお付き合いしてきました。

久しぶりに会う機会があって、改めて話を聞いてみたんですが——正直、びっくりしました。

「一業種一社、まだやってるんですか?」

思わずそう聞いてしまいました。

Webマーケティングの世界は、この12年でずいぶん変わりました。プレイヤーは増え、インハウス化も進み、ツールも手法も様変わりした。そんな中で、創業当初に決めたルールをここまで貫いている会社は、正直あまり見たことがありません。

「当たり前のことをやってるだけですよ」と酒井さんは笑っていましたが、同じ業界にいる人間ほど、その「当たり前」がいかに難しいかはわかります。

今回は、タガタメの創業の原点から、事業理解へのこだわり、「一業種一社」という方針の背景まで、じっくり話を聞かせてもらいました。

「そんな会社がなかったから、自分で作るしかなかった」

酒井さんが独立したのは12年前、タガタメの創業と同時です。

起業前に在籍していた会社で「いずれ独立する」という前提で準備期間を設けてもらい、創業後もその会社から業務委託という形で最初の仕事をいただけたこともあって、立ち上がりは比較的スムーズだったといいます。

「立ち上がりで大きく苦労することはなかったですね。ただ、申込書や契約書といった当たり前に必要なものが何も揃っていなかったので、新しい契約を結ぶたびにその整備に追われていました」

独立の動機として話してくれたのは、ある種の「なさ」への違和感でした。

「クライアントと本当の意味で伴走しながら、売上や利益の向上を一緒に目指す。そういう会社がなかなかなかったんです。だから、ないなら自分で作ろうと思いました」

広告業界に感じていた、三つの違和感

独立の背景には、当時の広告業界への具体的な違和感もあったようです。

一つ目は、施策がクライアントに理解されないまま進むこと。

「成果だけにフォーカスして、中身はこちらに任せてくださいという形で進めて、結果が出なかったときにクライアントからすると『騙された』みたいな感覚になってしまうことがあった。自分もそういう場面を経験してきたので、それだけはやりたくなかった」

二つ目は、予算の小さいクライアントが門前払いされること。

当時の業界では、30〜50万円程度の予算規模では受けてもらえない代理店も少なくなかったそうです。

「どんな大企業も最初は小さな会社だったはずなんです。だから予算の大小ではなく、一緒に成長できるかどうかを大事にしたかった」

三つ目は、広告アカウントの情報が開示されないこと。

「クライアントが自分の広告の管理画面を自由に見られる状態で運用するというのは、当時はかなり珍しかった。でも、やっていることをそのまま見ていただくことが信頼の基本だと思っていたので、創業当初からそれを実践しました」

ちなみに正直に言うと、創業期は手元の資金が限られていたため、広告費をクライアントのアカウントに直接入れてもらう形を取っていた側面もあったそうです。でもそれ以上に、「納得した上で施策に取り組んでいただく」という姿勢が根底にあった、と話していました。

15万円から300万円へ

「予算が小さいクライアントとも一緒に成長する」という言葉には、実際のエピソードがあります。

創業当初、月額15万円ほどの広告予算からスタートしたクライアントがいました。ブランド買取事業を行う企業です。

Google広告の運用から始まり、アクセス解析、サイト改善、さらには事業計画の相談まで担当。

「売り上げが上がってきたら、来年の予算どのくらいにしますか、とか。この事業が目指す未来はどこだ、みたいな資料を勝手に作って持っていくこともありましたね」

笑いながら話してくれましたが、これはもはや社内の事業担当者のような動き方です。

結果として、取引規模は月額300万円規模まで成長しました。

なぜ「事業理解」にこだわるのか

タガタメが一貫して大切にしているのが「事業理解」です。

「事業を理解していないと、クライアントが本当に望んでいる数字を改善できないんです」

広告運用の現場ではCPAが重視されがちですが、CPAが改善されたからといって利益が増えるとは限りません。

「問い合わせは増えたけれど受注しない。そういうケースは本当によくあります。特にBtoB企業では、商談化率、受注率、検討期間、決裁フロー、営業体制まで理解しなければ本当の成果にはつながらない」

事業理解がないまま支援が進むとどうなるか。

「目の前のCPAやコンバージョン数の話だけで終わってしまって、最終的なユーザーの満足度も、クライアントの売上・利益も置き去りになっていく。数字は達成しているのに本末転倒、という状況が生まれるんです」

この話を聞きながら、自分自身も思い当たることがありました。Webマーケティングの現場では、どうしても目の前の数字に引っ張られやすい。でも本当に大事なのは、その先の利益につながっているかどうかです。

営業担当者の言葉が、最高のマーケティングになる

タガタメでは、広告担当者だけでなく営業担当者へのヒアリングも積極的に行うそうです。

「受注率の高い営業担当者が、どんな言葉を使っているか。どんな順番で説明しているか。どんな不安を解消しているか。そこにLPや広告文を改善するヒントがたくさんある」

「その営業担当者はWebマーケティングに関わっていないのでは?」と聞くと、こう返ってきました。

「だからこそ聞きに行くんです。ご了承いただいた上で直接話を聞いて、そのトークやフレーズをLPに反映すると、獲得率が大きく改善することがあります」

問い合わせという入り口から受注という出口まで、一本の線として設計する。それがタガタメのやり方なんだと思います。

「一業種一社」を12年間、貫いた理由

今回の話で、私が一番聞きたかったのがこれでした。

タガタメは創業当初から「一業種一社」——同じ業界の企業を複数支援しない——という方針を取っています。

同じ業界にいる者として、これを貫くことがどれだけ難しいかはわかります。規模を拡大しようとすれば、同業種のクライアントを複数持つ方がはるかに効率的です。久しぶりに会ってこの話を聞いたとき、「まだやってるんですか!?」と思わず声が出たくらいです。

酒井さんはこう言いました。

「利益だけを考えたら、その方がいいのはわかってるんです。創業当初にも、支援していた企業より大きな案件のお話をいただいたことがあった。資金的には本当に欲しかった。でも断りました」

理由はシンプルです。

「広告は検索結果や広告枠を取り合う世界です。同じ業界のクライアントを自社内で支援すると、結果的にどちらかの利益を削る可能性がある。お客様の売上や利益を預かる立場として、お客様同士を競わせることはできない」

さらにこう続けました。

「サラリーマン時代に、同じようなキーワードを使う複数のクライアントを担当していたことがありました。あるお客様から改善を求められても、別のお客様との関係でまっすぐ向き合えない。そのもどかしさを経験していたので、自分の会社ではそういう思いをメンバーにさせたくなかった」

創業時に大型案件を断って以来、12年間この方針を貫き続けている。

「受けられない会社がどんどん増えていくのでは?」と聞くと、

「広告の枠は業種ごとに分かれています。まだまだ一緒に成長できる会社はたくさんあると思っています」

あっさり言ってのけるのが、酒井さんらしいなと思いました。

タガタメは「広告代理店」なのか「コンサル会社」なのか

「そもそもタガタメって、どういう会社なんですか?」と改めて聞いてみました。

「広告代理店と言われても否定はしません。ただ、私自身の認識としては、コンサルティングとは利益貢献だと思っています。利益貢献を目指しながら、広告代理業もやっている、というのが近いかもしれない」

支援の範囲は広告運用にとどまらず、Webサイト改善、データ解析、CRM、メール施策、集客導線設計まで及びます。フロントのメンバーは、Webディレクションから広告設計、問い合わせ後のアプローチ設計まで一人でこなせる人が多いとのことで、上流から下流まで一気通貫で見られる体制を作っているようです。

相性のいいクライアントについて聞くと、こんな答えが返ってきました。

「私たちの提案を真摯に受け止めて、一緒に動いてくださる会社です。逆に、リスティング広告だけ、このページには手を触れないで、といった制約が多い場合は本質的な改善につながりにくい。バケツに穴が開いたまま水を注ぎ続けるようなことになってしまうので」

話を聞いて思ったこと

12年ぶりに改めてじっくり話を聞いて、正直なところ刺激を受けました。

Webマーケティングの世界は、この12年で本当に変わりました。ツールは増え、手法は多様化し、プレイヤーも激増した。そんな中で、酒井さんが話してくれた根っこの部分——クライアントの事業を理解して、売上と利益に本気で向き合う——は、12年前から何も変わっていませんでした。

「誰かのために仕事をする」という想いが込められたタガタメという社名。

久々に会ってよかったと、素直に思いました。

取材・文/株式会社ユナイテッドリバーズ 代表取締役 沢辺敦志