ロボットが人間の仕事を奪って何が悪い。失業“問題”という思い込み


最近、ITやロボット技術の進歩により人間の仕事が奪われてしまうという論調の記事をよく目にします。

機械との競争: 技術革新による失業の第3波を人類は乗り越えられるか(ガジェット通信)※元記事は「NPO法人 知的人材ネットワーク・あいんしゅたいん」によるものですが、削除されていたためこちらにリンク。
IT革命が奪う中流ホワイトカラー職―米雇用増の大半は高・低賃金(肥田美佐子のNYリポート)
2045年、コンピューターの能力が全人類の知能を上回る?その時人類は・・・(カラパイア)

原発での廃炉作業や、戦争や農業まで代わりにやってくれるのですからその心配はごもっともです。

放射線・高温・暗闇…災害に負けない「万能ロボット」 今夏実用化へ(日本経済新聞)
農業用ロボット、次の限界である「収穫」に挑む(ウォールストリートジャーナル)
「殺人ロボット」は国際条約で禁止を、人権団体が警鐘(AFP通信)

このままロボット技術が進化していくと、人間が従来やっていた仕事がどんどんロボットに奪われていくのは間違いないでしょう。ロボットに代替されない仕事とは何かを一生懸命考えている人もいるみたいです。

うーん、よくわかんないんですけど、それってなんで問題なんでしたっけ?

各現場で人間とロボットの置き換えが進んだところで、社会全体が生み出す財(=モノやサービス)の量は変わらないか増えるはずです。その上でまだモノが不足しているのであれば失業者はそこに充当されるでしょうし、足りているんであればわざわざ仕事なんかする必要はないわけで、手が空いた人は素直に遊んで暮らせばいいと思うんですよ。

「いや、いくらモノがあっても仕事して稼がなきゃ買えないじゃないか」

という指摘も現在の貨幣経済をベースに考えるなら至極ごもっともです。スーパーマーケットにモノが溢れていても、財布に金がなければ買えません。ごくごく当たり前の理屈です。

でも、あらゆるモノやサービスが極めて低コストで、ほぼ自動で作られる社会が実現したらどうなるでしょうか。

貨幣という発明が優れていたところは、財の交換をスムーズにしたことです。物々交換主体の原始社会では、お互いに交換可能な価値のあるものをタイムリーに持っていなければ財の移動は行われませんでした。それを一時的に貨幣に置き換えることでいつでもスムーズな交換が行えるようになったわけです。貨幣すげえ。

でもそれは、財が希少だったからこそ成り立った話です。

あらゆるモノやサービスが無視できるほどの低コストで提供できるようになったら、「交換」なんてケチくさい概念はもはや不要になります。誰もが欲しいだけのモノを欲しいときに手に入れられるようになるのです。

たとえば、南国の豊かな自然に囲まれた未開社会で貨幣経済が発達しなかった理由を考えてみましょう。海に行けば魚が獲れ、森に入れば一年じゅう果実が実っている。そうした環境では「貨幣を通じた交換」なんてしちめんどくさい約束事を導入するほうが、よほど高コストなためだったせいではないかと思います。

では、あらゆる財がロボットにより作られ、無償で提供される世の中とはどんな社会でしょうか。じつはこれにはすでにモデルケースがありまして、古代ギリシアなんかがよい参考になります。(※ギリシアでも貨幣経済は導入されていましたが)

古代ギリシア(Wikipedia)

戦士であり政治家でもある古代ギリシア人は労働を蔑み女性や奴隷に任せて、体力の鍛錬と政治談義に日々を過ごし、その中でギリシア哲学や科学が発達した。

仕事は奴隷にやらせて、自分たちは一日じゅうスポーツやおしゃべりに興じていたわけです。なんという高等遊民。まあその代わり、戦争の際には兵士として戦う義務を負っていたそうですが。

古代ギリシアの場合は、外国からさらってきた奴隷により労働を支えていたため、一段マクロな視点では単なる収奪者でした。しかし、労働力の供給源が奴隷ではなくロボットであればどうでしょう。その社会ではもはや失業なんて問題にならず、労働に汗をかくのは完全に趣味になるのではないでしょうか。

ぼくらが子どものころに描いた未来では、ロボットが人間の代わりに働いてくれて、人間は遊んで暮らせるユートピアがわりと当たり前だったと思うのですが、どうして最近は悲観論ばかりが優勢なんでしょうね。なんだかよくわかりません。

あと50年くらいしたらこういう社会が実現してそうな気がするんですけど、そのころには私は80歳過ぎ。なんであと50年遅く生まれてこなかったのか、運命を恨む今日このごろです。

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13 thoughts on “ロボットが人間の仕事を奪って何が悪い。失業“問題”という思い込み

  1. 古代ギリシャのような生活が実現した時、あなたは失業者として橋の下で飢え死にをまっているでしょう。
    ロボットがすべてをやってくれる時代、資産家と、ロボット技術者以外の人間が存在する理由が消えますから、社会保障制度も無くなっているでしょう。
    それでもあなたは、理想的な時代だとおっしゃいますか?

  2. Pingback: 2013-03-18のニュース | Re: spam news

  3. 生産力が上がれば、人は働く必要もないし貨幣も不要になるってのはマルクスの主張(想像?)そのままですね。)

    もしかしてパロディですか?
    (そうだったらごめんなさい)

    • 書いた後にいわれてみればそうだったと思い出しました。

      (追記)
      マルクスが「貨幣イラネ」といっていたのは知りませんでした。
      勉強不足ですみません。

          • 共産党宣言なら30分で読み終わりますよ。

            あの本も今で言えばブログ的な位置付けだったみたいですしね。

            まぁ僕だって熟読したわけでもないですが。

        • ツリーが限界なのでこちらで返信をば。

          > 共産党宣言
          そんな短い本だとは知りませんでした;
          イメージ的にもっと分厚い本だと思っていたので、今度読んでみます!
          ご教示ありがとうございました。

  4. 「ロボットが人間の仕事を奪って何が悪い」と言える人は、ロボットを所有している立場の人ですよね。ロボットを所有するには、
      1)個人が所有する(直接所有)
      2)政府や自治体が所有する(間接所有)
    があると思います。

    人間が生活するために必要なあらゆるものをロボットで生産するとしたら、「衣食住」という簡単な言葉で表せる範囲のことを考えたとしても、相当な種類のロボットと広大な土地が必要になるでしょう。よって、政府・自治体のレベルで所有しなければ、このような世界は実現しません。

    また、ロボットのメンテナンスや修理も必要です。これもロボットでやればという意見があるかもしれませんが、「メンテナンス・ロボットをメンテナンスするロボットが必要」というサイクルが続きそうですし、部品、ひいてはその原材料の輸入も必要となり、机上の空論で終わりそうです。

    とは言え、基本的な食料の生産に限定して考えれば、政府が野菜工場等を所有することで、国民に対して安価に配るといったことは、可能な気がします。ただ、国もこういった仕組みを税金で構築するのでしょうから、やはり国民は働いていることになりますよね。

    ということで、考えとしては面白く、部分的には成立する可能性があるものの、全面的にこういった世の中が到来するのは困難と思います。もっとも「小人閑居して不善をなす」という諺もあるので、実現しない方が世の中のためかも知れません。

    • 「所有権」って考え方も、アプリオリなものじゃない気がするんですよね。
      ふわっとした「社会」が作り出した、誰のものでもないロボットの存在もありえるんじゃないかと思います。
      それをメンテナンスしたりなんだりするのも気がついた人でいいんじゃないかなと。

      ふにゃふにゃがある以上、だれそれがそれを果たす義務を負わねばならない、みたいな考え方が、なんだか世の中を窮屈にしている気がするのですよね。

      報酬はなくとも世話好きのおばさんとかいるわけで、生産性が激しく向上するとそういう人の好意だけで十分まわっちゃう気がするのです。

  5. 1番上の引用の著者です。イラクのクルド人のハッカーからハックされて、ホームページを閉じておりました。最近ようやく復活しました。ハックされた理由はわかりませんが、イスラエルを支持する者は皆ハックするそうです。私の文章は日本語ですしイスラエルもアラブも支持した覚えはありません。

    ところでロボットが仕事を奪うという議論に関してはいろいろな意見があります。ロボットが人間の仕事を全部やってしまえば人間は遊んで良いというのは共産主義の夢です。友人の共産主義者はそう主張します。しかし共産主義は失敗しました。資本主義の社会ではロボットが生産した財はほとんど企業家、資本家、お金持ちに行ってしまいます。アメリカが典型的ですが格差社会です。技術の問題というよりは社会システムの問題です。

    社会システムを変えてお金持ちからたくさん税金を取り、それを庶民に配ればよいという議論もあります。要するに社会主義的な政策です。アメリカでは強硬な反対があり、他の国家でも現状の資本主義社会を見る限り、それはなかなか難しいと思います。共産主義革命は結局は失敗したわけですからね。

    過去の技術革新の時と同様に失われた仕事の代わりに新しい仕事が出てくるという議論もあります。それは一定程度確かですが、その仕事が高給をもたらす保証は全くありません。また急速な変化に人間が適応する時間がありません。1部の高級を取るものと多数の低所得者に分かれます。格差拡大です。

    あるいは労働者は貧しく、つつましく生きる準備をすべきだという議論もあります。格差を受け入れようという議論です。

    いずれにせよ未来のことは本当はよくわかりませんが、バラ色のユートピアではないのではないかと思います

    • >イラクのクルド人のハッカーからハック
      そ、それはすごい体験ですね;

      お金持ちがガメるんじゃないかって話ですが、物をガメるよりも尊敬を集めた方が気持ちがいいくらいに物があふれた(実体財の価値が低い)状態になるといろいろ変わってくるんじゃないかなと。
      悲観よりも楽観のほうが精神衛生上好ましいですし、未来はユートピアが待っていると信じることにしてますです。

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