異業種交流会(短編小説)


異業種交流会の招待があったので、試しに参加を申し込んでみた。
仕事のため……ではなく、好みの女の子と知り合えたらいいなと思ったからだ。

だいたい、異業種交流会というのは半分飲み会で残りの半分は合コンみたいなものだ。そんなのに混ざったところで仕事の役に立つわけはないし、本気でそれが仕事の役に立つと思っている連中がいるとすれば、それは保険かマルチの営業マンだ。

いままで参加したことはないけど、きっとそうだと思う。

とはいえ、出会い目的と割り切れば、お見合いパーティやらキャバクラなんぞよりも遥かに割安。けっこうお得なイベントだろう。

そんなわけで会場にやってきたけれど、これがやたらに混んでいる。イライラして列の先を覗き込んでみると、どうにも様子かおかしい。

何十人も行列を作っているのに受付が一人しかいないのがおかしい、というわけではない。その汗を拭き拭き受付をこなしている男が、4本の腕を振り回しているのだ。

仮装パーティか何かだったのか?

そう思って辺りを見回してみると、一つ目の女がいたり、角を生やした男がいたり。なんだこれは。そんな話は聞いていないし、そういう欧米かぶれな催しには馴染めないから遠慮したい。ハロウィンにしたって時期外れだ。

行列を抜けて帰ろうかと迷っているうちに受付の前まで来てしまった。4本腕なだけに2人分のスピードだったのか。そんなわけがあるか。

受付の男に尋ねる。

「今日は仮装パーティーだったの?何も聞いてないから、そんな準備してないんだけど」

男はきょとんとした表情で言い返した。

「誰が仮装してるっていうんですか?」

改めて辺りを見回すと、鱗で覆われた男に、真っ白い羽のある女。素人の仮装とは思えないほど生々しい。

「案内読んだでしょう。今日はこれですよ、これ」

男が指差した先には看板がある。

『異形種交流会』

ははあ、なるほど。水木しげる御大がいれば泣いて喜ぶイベントだ。よくよく見れば猫目で爪の鋭い少女もいれば、指先から砂をふき出す老女もいるではないか。しかし、これではますますおれの参加できるイベントじゃない。

「あのさ、悪いんだけどたぶん手違いで参加しちゃったみたいだ。見てのとおり、おれには異形なところなんてないよ」

「そんなはずはありませんが……」

男はそう言っておれの顔をじっと見つめる。

「嫌だなあもう、ちゃんと性根がねじくれてるじゃあないですか」

ははあ、なるほど。

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